今回は、日本電産サーボの分析を見てみましょう。日本電産サーボは、群馬県桐生市に本社を置くブラシレスDCモーター、ステッピングモーターなど、精密小型モーターの製造会社です。もとは日立グループでしたが、2007年4月、日本電産がTOBにより子会社化しました。永守重信氏が取締役会長に就任されました。
経営体質の強化の為に日本電産流マネジメントの導入を図り、売上増・原価低減・経費削減とともに3Q6S活動(「良い社員(Quality Worker)」「良い会社(Quality Company)」「良い製品(Quality Products)」「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清潔(Seiketsu)」「清掃(Seisou)」「作法(Saho)」「躾(Shitsuke)」)を中心とした社員意識改善活動を展開しました。
それでは、SPLENDID21による分析結果を見てみましょう。
2008年総合評価(企業が成長したか衰退したか)が黄信号領域から飛び出しました。○と矢印で示したとおり、営業効率の改善が大きく貢献しています。また営業効率改善により流動性の改善も起きています。日本電産はグループ会社化に際して増資していませんので、純粋に営業効率改善による流動性改善と見ることが出来ます。
2006年2007年は営業損失を出し、営業効率(儲かったか)は赤信号領域になっています。強い会社は営業効率が赤信号領域に入っても、翌期青信号領域に回復できます。2008年は日立グループの時代より良い営業効率になりました。3Q6S活動の成果でしょう。社員の机の中を棚卸したら、5年分の文房具類が出てきたそうです。
生産効率(生産性は上がったか)は改善に向かいましたが赤信号領域のままです。永守会長はM&Aに際してリストラは行わないことを決めておられます。今後、生産効率は売上高、利益率の向上とともに改善トレンドを描いていくことになるでしょう。
流動性(短期の資金状況)は悪化トレンドから改善トレンドへ移行しました。
安全性(長期の資金状況)は青信号領域の比較的高い位置にあります。日本電産サーボはもともと良い会社であったことがわかります。
営業効率を見ていきましょう。
日本電産サーボでは長年使ってきた金型が、ずっと雨ざらしのまま工場の外に放置されたままになっていました。再利用が十分可能な金型でしたので、 「長年、活躍してくれた金型を使い終わったら雨ざらしにするのか!」「あなたたちも使い終わったらこのような扱いをされてもいいのか」と、永守会長は叱ったそうです。その金型を磨いて売ったら何と700万円になったそうです。日本電産は売上高1億円あたりの経費(変動費)が430万円なのに対し、日本電産サーボは1000万円も使っており、それを意識改革によって500万円にまで減らしました。
そんな話を裏付けるかの様に売上総利益率が6.93%改善しています。売上高経常利益率も7.48%改善しています。
親会社の日本電産の連結財務諸表の分析を見てみましょう。営業効率が天井からはがれおちてきています。経常利益増加率も下がってきています。今後、子会社の成長とともに、改善トレンドに向かうと思われます。
まとめ
リストラをしないで無駄を省く経営の成功事例です。それを支えるのが整理・整頓など、社員の身近の行動が基礎になっています。
SPLENDID21NEWS第37号【2008年12月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。